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ふたつのパラドックス -アトリエN- [アトリエN]

 およそ38億年前に海の中で生まれた植物が地上に進出したのは、5~6億年前の事だそうである。そんなにも永い時間がかかったのは太陽の紫外線のためで、この紫外線というやつは、動物植物にかかわらず、あらゆる生き物の体内に活性酸素を生じさせ、生命活動をサビつかせる厄介な代物であるという。
 海の中にいる限りは、水が紫外線を吸収してくれるので問題は起きなかったが、むき出しの地上では、そうはいかない。
 そこで植物たちは気の遠くなるような永い時間をかけて、活性酸素を無害化する物質を作り上げた。代表的な抗酸化物質としてはビタミンCやEなどがあるが、ポリフェノール類も重要な抗酸化物質である。
 花や果実を赤や青色に染めるアントシアニン、キクやヒマワリなどの黄色の元になるカロテノイドはポリフェノールの一種で、その鮮やかな色で虫や鳥を呼び寄せる働きのほかに、種や実を活性酸素の毒から守る働きも兼ねている。だから、紫外線の強い高山地帯の花や果実はより鮮やかに色づき、その影響をあまり受けない温室の中では、いくぶん色が落ちるといわれている。
 フレンチ・パラドックスという言葉がある。
 脂っこい食べ物が大好きなフランスの人たちが、アメリカ人やドイツ人と較べると、理論上では心臓病になるリスクがもっと高いはずなのに、実際にはずっと低いことが、長い間謎とされていた。フランスの人たちは「水がわりに赤ワインを飲む民族」といわれるが、その赤ワインに含まれるアントシアニンがそのリスクを抑えていることがわかってきた。
 種も皮も一緒にワインの原料になる赤と較べて、果肉のみでつくられる白ワインはアントシアニンの含有量が少なく、あまり効果は期待できないそうである。
 ジャパン・パラドックスという言葉もある。
 欧米人と較べると成人男性の喫煙率が2倍ほども高い日本人。喫煙者本人だけでなく周囲の人の受動喫煙の害もかまびすしく叫ばれているのに、どうして日本は世界に冠たる長寿国なのか?不思議に思われてきたのだが、その理由の一つが大豆食品にあることがわかってきた。
 味噌・醤油・納豆・豆腐・おから・枝豆などの大豆食品に含まれるフラボノイドが、日本人の長寿を支えているのだ。
 もうひとつ、和食で忘れてならないのは緑茶である。
緑茶にはカテキンやミリセチンなどのポリフェノールのほか、ビタミンC・E、カロテンなどがたっぷり含まれていて、昔から『旅に出るときには必ず朝茶を飲んでいけ』と云われていた。
 ヒト科ノンベ属の一人であるわたくしも寄る年波には勝てず、深酒が効かなくなってきた。そこで今後は考えを改めて、酒は赤ワインをメインとし、つまみは枝豆・豆腐・納豆を摂ることにし、酒の後には緑茶を飲んで〆にしようと思い至っている。
 「そんなことより酒をやめなはれ」
 だって?
 うーん、やっぱりそう来ますか・・・・・。
  N田さん

くだもの.jpg
イラスト提供:イラストAC https://www.ac-illust.com/

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