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植物標本の制作を終えて [なな山だより]

なな山緑地植物標本プロジェクトは、2015年4月に首都大学東京、牧野標本館の加藤英寿先生の指導のもとに発足し、この春終了しました。このプロジェクトでは、なな山に生育する維管束植物(木本、草本、シダ)の花の標本を作成することをめざして収集にあたり、標本は牧野標本館へ寄贈しました。寄贈点数は383点でした。雌株、雄株があるので種類としては木本126種、草本227種、シダ17種、合計370種でした。発見できない植物を含めると400種くらいの植物がなな山にはあるではないかと思います。
採取は高い木の上で高枝ばさみを使って花のついた枝を取ったり、雨の降りしきるなか、どろんこになって根を掘ったり、ホオノキやヤマユリなどの大形の植物は乾燥を依頼するべくバケツごと標本館に運び込んだり、皆が夢中になって標本を作り、その手応えを感じることができた活動だったと思います。採取はしたもののシダをはじめイネ科、カヤツリグサ科など同定できない植物は長池公園園長の内野秀重先生に協力をお願いしました。
維管束植物の花の収集は終了しますが、また違う形で継続できれば、楽しくより深化できるのではないかと思います。コケ類は未完ですが、近日中に収集したいと思っています。
 N原さん

ルーペの中に広がる胞子世界を垣間見る
なな山緑地の植物採集も大詰めを迎えるころ、シダ類の標本を集めることとなった。はっきりとは区別できないが、何種類かのシダがあることは明らかであった。その区別は細かい葉の形・つき方、葉裏の胞子嚢の有無と形状、 軸の立ち方などで違う名前がついているようだ。10数種類を専門家の方に同定してもらい、説明を受けたが、数種類の区別がかろうじてつくくらいにしかならなかった。それでも、根気よく一種ずつ丁寧に標本としていった。 この貴重な体験は、胞子世界への興味を一段と高めていた。
 A田さん

ちいさな花たち
紫色の花が好きでオオイヌノフグリやタチイヌノフグリ、ツユクサとたくさんの種類を標本にさせてもらいました。弱々しい花なので、寒いと花弁は閉じてしまうし、小さい花がどこにあるのかわからなくなってしまいます。虫メガネで確認しながらピンセットでそっと新聞に挟み込む作業は大変でした。しかし、日々忙しいなか大好きな花をじっくり眺め、丁寧に作業するというのはとても心地よい時間でした。
 I田さん

シュンランの根っこはゼンマイのよう
牧野標本館に納め、学術標本として扱われる押花作りは、慣れるまで少々緊張の作業でした。採取は花を痛めないよう、根を傷つけないないようほとんど2~3人がかり。 根は水洗いし、葉は表裏を配置、花と共に仮押しができるとひと安心でした。家に持ち帰ってからは毎日新聞紙を替え、手に持って硬く水平になれば乾燥完了。手間と時間はかかるものの変化しながら標本に近づく姿を見るのは楽しい瞬間でした。担当したシュンラン、キンラン、なな山の希少種コクランは特に印象深く、繊細な美しい花の根っこは予想に反し太く、力強くダイナミック。生命力に溢れ、それぞれに特徴がある植物達に魅了された標本作りでした。
 I井さん

なな山からの貢ぎ物
懐かしい気持ちで始めた採集でしたが、思った以上に大変な作業でした。特に決められた大きさに収めるにはどうしたらいいのか悩みました。そのままの状態で重しをし、乾燥が始まってから紙の大きさに収めれば良いと分かってからは植物の細部の美しさや変化を楽しみ作業が面白くなりました。私はほんの一部しかお手伝いができませんでしたが、またとない貴重な体験を共有し、お仲間に入れて頂きありがとうございました。
 S々木さん

講習会で標本の作り方を学ぶ.JPG
講習会で標本の作り方を学ぶ

クロムヨウラン : 寄せ集めの標本
ヘンなもの発見。アズマネザサの根元に生える細い針金細工のようなものは前年の菌従属栄養植物、クロムヨウランとのことでした。最近、注目されてきた光合成をしないラン科の植物のひとつです。8月には新たに1本が出てきましたが、1本では採取できないので、標本には前年のものと思われる個体2本、触って落としてしまった花(長さ約12mm)ひとつ、蕾の写真2枚という寄せ集めの標本になってしまいました。他の標本のような美しさや存在感は感じられませんが、貴重な資料としてお役に立つことを願って提出しました。
 N原さん

アオキの変身
担当の12種ほどの中で一番手をやいたのが「アオキ」。 肉厚の葉っぱの水分が抜けてちゃんと標本になるまでに約3カ月。あまりにも変化がないので何度も不安になったり、長期の留守中に白いカビがうっすら付いて慌てたりと、かなり振り回されました。出来上がりは、洋服の色にしたら素適な「黒に近い深い緑」。どこにでもある「アオキ」も、標本にすれば魅力的な色の深さを持つ絶品に変身です。
 N雲さん

植物標本作製に出会って
なな山の自然と関わりを深めたいとの思いで標本プロジェクトに参加しましたが、根から掘り上げて花までを新聞紙半面の中に収めて押すのはなかなか形が整わず、根気と器用さが求められ苦戦しました。なな山では春、夏、秋に咲く花の多様さは素晴らしく私が手がけたのは10種ほどですが、標本を作ってみて更になな山の魅力に触れた思いです。
 N黒さん

オオシマザクラ
植物達は各々に個性的で繊細な感情を持っているように思います。標本に掛かる時、私は優しく語りかけます。大島桜を手にした時は心が震えました。花びら一枚一枚の間に薄い和紙を挟み込み、更に柔らかい紙で花を包み、 紙を小さく切ってクッションにしていきます。終わった時は夜が明けていました。祈る思いで毎日外側の新聞紙を取り替えました。完成した姿は凛としていて、もう近づき難い思いがしました。忘れられない花となりました。
 M岡さん

ヤブマメの隠れた一面
標本作りもひと通り終わりかけた秋に、クズの繁みにからみついたヤブマメを採集。いつものようにN黒さんにスコップで根を掘ってもらう。広場でN雲さんとやっとの思いで絡んだつるをほどき新聞紙にはさむ。花と小さなマメが出来ていて、根にも根粒菌があってまずまず。1月に内野先生の同定直前、N原さんから連絡が入る。根粒菌は閉鎖花では?その上、地上にも閉鎖花があるらしいとの指摘。おおあわてでルーペで見ると、それらしい小さな物体、地上のマメの出来始めと思っていたものも 閉鎖花のようだ。いつも除草で悩まされていたヤブマメの隠れた一面。植物ってこれだから面白い。
 M倉さん

標本制作プロジェクトに参加して
このプロジェクトに参加の動機は、普段目にする植物の葉や花だけでなく、細かい根の先端まで標本として制作出来る繊細さに惹かれたから、と思います。標本の同定過程では、図書館やインターネットで調べるので、その植物について今まで気付かなかった事が判る楽しみが有りました。標本作りに必要な道具を真似て自作し、意欲が有ったにも拘らず、標本制作はほんの数点で一番少ない結果に終わってしまいました。標本の制作の素晴らしさは、ただ植物を見ていては気付かないかった事をはっきりと認識する事でしょう。例えば、スギの標本で言えば、花粉症の原因の雄花は枝の何処に、雌花や前年の球果はどの様に付いている、等を知る事が出来る事でしょう。又、花の咲く植物の標本では、採取するタイミングが大切な事を教わりました。ホオノキの開花時に、梯子に登り高い所の枝の採取を手伝った事も思い出の一つです。
 M﨑さん

植物採集を終えて
牧野といえば「牧野すみれ」くらいしか頭にない私が、高山植物が好きというだけで、このプロジェクトに手を上げましたが、途中でやめたほうがいいかもと思った事もありました。が、なな山を植物を探しながら歩き、根ごと掘り出したそれを洗い、新聞の上にのせた時の新鮮な驚き、私達の回りにいつもあるすべての草や花に名前があり、出来上がった植物の美しさ。迷惑をかけながらも、やめないで良かった。最後のネコハギは、うまく出来たでしょうか。
 Y元さん
                「なな山だより」43号より

牧野標本館で行われた完成標本のお披露目会.jpg
牧野標本館で行われた完成標本のお披露目会

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