名前のはなし その2 -アトリエN- [アトリエN]
寿限無・寿限無・五劫のすりきれ(以下略)は結構ワルガキで、近所の子供を殴ってたんこぶをこさえたりもする。ある日殴られた子供が寿限無の家にやってきて、「おじさん、お宅の寿限無・寿限無・五劫のすりきれ(以下略)があたいを殴ってこぶができちゃったよ」
すると親父が「なに?うちの寿限無・寿限無・五劫のすりきれ(以下略)がおめえを殴ったのか?ちょっと見せてみな」
そんなやりとりを続けている間に、あまりにも長ったらしいので、子供のたんこぶは引っ込んでしまった。
落語『寿限無』は皆が良く知っている噺ながら、そのわりに真打級の噺家が演じることは、あまりない。どちらかと言えば前座ネタである。
パブロ・ピカソの本名は《パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロスデメディオス・クリスピーン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・ピカソ》だというが、ピカソ自身覚えきれないからと生涯使った事がないという。
植物界で最も長い名前(和名)は、リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ(竜宮の乙姫の元結の切り外し)で、アマモという海草の一種だそうだが、一体誰がこんなにも長い名前をつけたのだろうか?
他に長い名前の植物を挙げると
シロバナヨウシュチョウセンアサガオ
シロバナトウゴクミツバツツジ
シロバナエゾノタチツボスミレ
ツクシヒトツバテンナンショウ
ミヤマホソコウガイゼキショウ
などがある。
哺乳類には「ニューギニアヒメテングフルーツコウモリ」
魚類には「ゴールディーリバーレインボーフィッシュ」
昆虫には「セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ」などがいる。
極端に短い植物の名前としては
「イ(藺)」で、畳の材料になる。
むしろ短すぎて言いにくいのか、「イグサ」と呼ばれたりもするが、長すぎても短すぎても不便なものらしい。
池田清彦博士の「不思議な生き物」という本の中に、トゲトゲ(トゲハムシ)の奇妙な話がある。体中にいっぱいトゲが生えていることから、その名がついているのだが、東南アジアにはトゲのないトゲトゲがいて、付けられた名前が「トゲナシトゲトゲ」。
ところが、体の構造はどうみても「トゲナシトゲトゲ」なのに、トゲのある「トゲナシトゲトゲ」が見つかった。そこでついた名前が「トゲアリトゲナシトゲトゲ」。
話はこれで終わらない。ニューギニアで、トゲアリトゲナシトゲトゲの仲間にトゲのないものが見つかったのだ。
『トゲナシトゲアリトゲナシトゲトゲ』
あまりにややこしいので、いい加減にしろと、面識のあるトゲトゲ(そんなもん、いるわけないだろ!)に文句を言ってみた。
「知るかよ、そんなこと。ニンゲンが勝手に名前を付けてるだけだろ」
と、トゲトゲしい返事が返ってきた。
× × × × × ×
人間はあらゆるものに名前を付けないではおかない。学者ともなれば尚更だろう。
しかし、ヒト以外の生物にとって、名前などは何の意味もないのである。
人間界にはたまに『名前だけで生きている』ようなヒトが出現するが、不思議な生き物とは、まさにそのような存在を言うのではあるまいか?と私は思っている。
N田さん
イラスト提供:「いらすとや」https://www.irasutoya.com
すると親父が「なに?うちの寿限無・寿限無・五劫のすりきれ(以下略)がおめえを殴ったのか?ちょっと見せてみな」
そんなやりとりを続けている間に、あまりにも長ったらしいので、子供のたんこぶは引っ込んでしまった。
落語『寿限無』は皆が良く知っている噺ながら、そのわりに真打級の噺家が演じることは、あまりない。どちらかと言えば前座ネタである。
パブロ・ピカソの本名は《パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロスデメディオス・クリスピーン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・ピカソ》だというが、ピカソ自身覚えきれないからと生涯使った事がないという。
植物界で最も長い名前(和名)は、リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ(竜宮の乙姫の元結の切り外し)で、アマモという海草の一種だそうだが、一体誰がこんなにも長い名前をつけたのだろうか?
他に長い名前の植物を挙げると
シロバナヨウシュチョウセンアサガオ
シロバナトウゴクミツバツツジ
シロバナエゾノタチツボスミレ
ツクシヒトツバテンナンショウ
ミヤマホソコウガイゼキショウ
などがある。
哺乳類には「ニューギニアヒメテングフルーツコウモリ」
魚類には「ゴールディーリバーレインボーフィッシュ」
昆虫には「セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ」などがいる。
極端に短い植物の名前としては
「イ(藺)」で、畳の材料になる。
むしろ短すぎて言いにくいのか、「イグサ」と呼ばれたりもするが、長すぎても短すぎても不便なものらしい。
池田清彦博士の「不思議な生き物」という本の中に、トゲトゲ(トゲハムシ)の奇妙な話がある。体中にいっぱいトゲが生えていることから、その名がついているのだが、東南アジアにはトゲのないトゲトゲがいて、付けられた名前が「トゲナシトゲトゲ」。
ところが、体の構造はどうみても「トゲナシトゲトゲ」なのに、トゲのある「トゲナシトゲトゲ」が見つかった。そこでついた名前が「トゲアリトゲナシトゲトゲ」。
話はこれで終わらない。ニューギニアで、トゲアリトゲナシトゲトゲの仲間にトゲのないものが見つかったのだ。
『トゲナシトゲアリトゲナシトゲトゲ』
あまりにややこしいので、いい加減にしろと、面識のあるトゲトゲ(そんなもん、いるわけないだろ!)に文句を言ってみた。
「知るかよ、そんなこと。ニンゲンが勝手に名前を付けてるだけだろ」
と、トゲトゲしい返事が返ってきた。
× × × × × ×
人間はあらゆるものに名前を付けないではおかない。学者ともなれば尚更だろう。
しかし、ヒト以外の生物にとって、名前などは何の意味もないのである。
人間界にはたまに『名前だけで生きている』ようなヒトが出現するが、不思議な生き物とは、まさにそのような存在を言うのではあるまいか?と私は思っている。
N田さん
イラスト提供:「いらすとや」https://www.irasutoya.com