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なな山緑地における帝京大学関連講座 報告三題 [なな山だより]

その1 帝京大学教育学部「人文社会科教養科目」甲野講師里山講座 多摩の里山と人の営み
 第一日目 5月11日(金)10:40~12:15  参加学生50数人
 本日の課題は4地点の観察ポイントで山の様子(立木の姿・林床の状態)を簡単な断面図に書き表すこと。書き表す見本は用意されていましたが、かなり苦戦していた様子でした。雑木林の5地点5様のクイズ形式の設問に答えることでした。キーワードはホダギ、萌芽更新、間伐、林床の草花、腐葉土です。
 そして、回答になるような雑木林の話を求められこの里山の成り立ちから語りました。
 半世紀前までは、薪炭林として生活エネルギーを担っていたこと。シイタケ栽培・木の実の採集場であったこと。落ち葉は農作物の大切な肥料であったこと等、人の暮らしに密接に関わっていました。当時は、薪炭材の伐採は直径が15㎝程度であって、伐採後の春にはたくさんの萌芽が期待され、その内の数本を残して成長を待ち、15年ほどで再び用材として伐採された。この繰り返しが雑木林の保全につながっていました。しかし、エネルギー源は、電気・ガス・石油に代わり、薪炭は不要になりました。雑木林の木は伐採されず、すくすく成長をしてきました。
 また、林床のアズマネザサは、材料としての役割を果たすことをしていました。畑の作物の支柱として、目籠(多摩のめかい)の材料として、そして工芸品やおもちゃの材料として、多くは住宅建築の塗り壁の小舞材として広範囲に使われていました。いずれもプラスチック材等に取って代わってしまいました。現在の管理では、ほとんどの場合、無用のものとして刈り払われる運命にあります。
 なな山では、アズマネザサを今風に利活用するべく、総刈りは避け、どうすれば今後に生かせる育成ができるか、東の山ではいろいろ試しているところです。また樹木も日照の確保や良質の景観を考慮しつつ間伐を進めていこうと考えています。野草の生育促進を考えたり希少種を保全したり、落ち葉を集めて堆肥化を図って農園に漉き込んだり、活動には際限がありません。

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里山講座

その2 アズマネザサ(シノダケ)刈りとその利用 
 第二日目 5月18日(金) 10:30~12:20   参加学生 45人
二班に分け、シノダケ・ヒンメリの基本形Aをあらかじめ作っておいた材料で組み立てる班と基本形Bのシノダケ採取の作業班とを交互に交代で行い、第三段階として全員で基本形Bの組み立てを行いました。(A,Bは写真参照)
Aは部材数12本で手順を覚えればごく簡単です。その手順で迷った人がいたようでしたが、全員組み立てられました。自分で採取して切り揃えた18本の部材で組み立てるBはAより手順が明確でやり易かったように見受けました。Bは材料の長さにより形が変わりバリエーション豊かなヒンメリが組みあがっていました。

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シノダケ・ヒンメリ。基本形A(下)・基本形B(上)

その3 帝京大学大学院教職研究科(教職大学院)三石教授 大森教授なな山緑地散策
 5月15日(火)12:30~14:30 教授・学生8人と合わせて10人
 まずは、緑地の活動で発生した材で作った大小の「ぶんぶんゴマ」を全員に試してもらいました。昨年大いに盛り上がったこともあり、散策前の勢い付けに遊んでもらったのですが、今年もやはり思惑通り皆はまったようです。二人で回す特大サイズも充分に役割を果たしてくれました。
 その後、約1時間半かけて、ゆっくり5月の森のみどりを観察・鑑賞していただきました。
 もうすっかり初夏の装いに変わったなな山散策は、みどりの空気にどっぷりとつかった心地よい散策となりました。
 かつての里山として人々の暮らしとともにあったこの緑地を歩きながら、西の山、中の山、東の山の植物相の違い、生物多様性の意味を考え、これからもこのような雑木林を維持していく必要性にも触れながら説明をしていきました。
 大学院生の反応が、話しにつれて敏感に帰ってくる心地良さを感じさせていただきました。
(相田さん)
       「なな山だより」44号より

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林間での講義風景

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