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ナラ枯れ感染ほぼ収束 【調査結果報告】 [ナラ枯れ]

なな山緑地の会のみなさん

今年2023年で4年目を迎えたナラ枯れは、ほぼ収束を迎えています。木くずなどのフラスのある木が少なく、全枯れの木も激減しました。ただこの3年間で発生した120本以上の全枯れ木対策は課題になります。

ナラ枯れ感染の推移
2020年発生したナラ枯れは、昨年2022年はピークを迎え274本が感染しました。まだ感染が継続すると予想していた今年2023年は、完全にピークアウトし21本。感染を示すフラスを探し出すのに手間取るほどでした。感染は、西の山から中の山・東の山に移っています。
全枯れ木の累計は121本。感染した翌年にはカビやキノコが発生し、落枝や倒木の危険が高まります。

ナラ枯れ調査集計_1.png
ナラ枯れ調査集計

ナラ枯れ調査グラフ_2.png
ナラ枯れ調査グラフ

ナラ枯れ被害
ナラ枯れの被害木は、コナラとクヌギです。なな山にはコナラが462本あり、感染率は81.2%とほぼすべてが感染しました。全枯れ木は118本、全枯れ率25.5%と、4本に1本が被害にあっています。感染しても4本に3本が生き延びたと捉え直した方がよいのでしょうか。
クヌギの被害は少なく全枯れ9本です。

ナラ枯れ被害コナラ_2.png
ナラ枯れ被害(コナラ)

ナラ枯れ対策とその効果
2年目を前にした2021年と翌2022年、ビニールシート被覆とカシナガトラップ設置のナラ枯れ対策を行いました。対策の効果は我田引水ですが、再感染しても全枯れを免れたと考えています。巨木のご神木を守れたのが何よりです。

ナラ枯れ対策2021年_2.png
ナラ枯れ対策2021年

ナラ枯れ対策2022年_2.png
ナラ枯れ対策2022年

ナラ枯れ感染図
ナラ枯れの感染は、西の山から始まり、徐々に中の山、東の山と広がっていきました。ピークの2022年は全山感染です。

ナラ枯れ調査(2020年)
ナラ枯れ調査_2020_1.png

ナラ枯れ調査(2021年)
ナラ枯れ調査_2021_1.png

ナラ枯れ調査(2022年)
ナラ枯れ調査_2022_3.png

ナラ枯れ調査(2023年)
ナラ枯れ調査_2023.png

ナラ枯れの今後
ナラ枯れは一度感染すると、木に抵抗力が付き、カシナガの穿孔を免れるといわれています。今年の被害激減から感染はほぼ収束したと思われますが、全枯れ木の対策が焦眉の課題です。2020年の市による伐倒からスタートし、今年からは会による伐倒などの対策を講じていますが、安心して山に入れる状況には当分なりません。常に落枝の危険があり、倒木の怖れもあります。実際、倒木している感染木も発見しています。全枯れ木121本の伐倒を進め、危険を排除する必要があるでしょう。並行して苗木の移植や他の木の間伐といった対策を検討し、ナラ枯れ後のなな山の植生、保全の姿を描いていきたいものです。

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ナラ枯れの被害が拡大! 3年目のピークか? [ナラ枯れ]

なな山緑地の会のみなさん

今年もナラ枯れ調査を行いました。
ナラ枯れ3年目の今年はピークを迎えたといえそうで、多くのコナラが感染しています。もちろん感染しても全枯れにならず、抵抗力を身に付け生存しているコナラも多いです。

今後の課題としては、枯損木化しつつある木の伐採と、雑木林の若返りでしょう。

○ナラ枯れ調査結果
・2022年の調査結果は、全枯れ52本、半枯れ18本、フラスあり164本、合計234本がナラ枯れに感染している。感染率は49%(全コナラ本数:480本)。
・2021年は、全枯れ18本、半枯れ6本、フラスあり82本、合計106本。また、2020年は、全枯れ6本、フラスあり32本。
・西の山のコナラ230本のうち125本が感染した(感染率54%)。

○今年の特徴
・カシナガの穿孔が、50cm以下(根元)に集中している。
・西の山から、中の山・東の山に感染が拡大している。
  ・昨年の全枯れ木では、一部でキノコや白カビが生え、腐食が進んでいた。また、枝折れや、株立ちの細い幹が折れるなど、枯損木化が進行している。
・クヌギの感染が増えている(2021年3本 → 2022年23本)。

○感染対策の経過
・カシナガトラップ設置18本では、全枯れ0本、半枯れ2本、生存/異常なし16本と、被害の激化を抑制している。

調査結果表2.png

ナラ枯れ対策.png

ナラ枯れ_キノコ.jpg
全枯れ木に生えたキノコ

ナラ枯れ_キノコ・白カビ.jpg
キノコと白カビが生えた

ナラ枯れ_キノコ2.jpg
2種類のキノコが生えた

ナラ枯れ_白カビ.jpg
木肌が白カビに覆われた

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アフターナラ枯れの話をしました 【ナラ枯れ情報交換会の報告】(2021.9.20) [ナラ枯れ]

なな山緑地の会のみなさん

9月20日、森木会「ナラ枯れ情報交換会」がZoomミーティングで開催されました。
森木会の各団体に加え、オブザーバーとして永山南公園きりんの会と長池里山クラブが参加しました。

各団体のナラ枯れ状況が報告され、一様に昨年より激しい被害にあっています。ナラ枯れ対策も各団体が工夫を凝らしており、成果が上がっているようです。まだ9月なので10月頃まで様子を見て、今期の被害がある程度確定するのでしょう。

各団体で「全枯れ」や「枯死」「赤枯れ」などと被害を表す用語にバラツキがあり、情報を統一的に見るときの障害になっていました。この用語の統一についても提案があり、大筋了解され、扱いを含め今後を森木会で検討することになりました。

なな山緑地の会の被害状況は、先日メールでお知らせした内容です。
この報告に加え、個人的な意見として「アフターナラ枯れ」と題して今後について発表しました。このアフターナラ枯れの内容はまとめるのに手間取りそうなので、被害レポートを先にお知らせした次第です。

アフターナラ枯れ.png

まず短期的な話です。
ナラ枯れは、コナラがほぼ感染してしまうと収束しますが、その期間は5年ほどでしょう。長くて10年です。感染のピークは2~3年目。なな山は今年2年目なので来年も激しい被害が想定されます。収束時の全枯れ数は、多めに見てコナラ100本。これを放置したままにすれば、5~10年で約50%のコナラが倒伏します。この危険を回避するため伐倒することになります。この伐倒本数は1年あたり10~20本。現状からでは考えられない作業です。このため全枯れ数を抑える対策を今後も続けていく必要があります。でも、コナラの伐採は避けられません。

で次に、長期的なことです。
コナラの寿命は80年ほどです。なな山のコナラは多くが50~60年です。つまり、20年ほどで寿命を迎え、倒伏するものが現れます。これを放置すればコナラ林は常緑広葉樹林に遷移するでしょう。落葉樹林が作り出している多様性豊かな植生、特に西の山は低木の常緑樹が繁茂する山に変貌する可能性があります。

これらのことから問いかけられているのは現在のコナラ林をどうするかということです。会創設以来18年かけて作り出してきた植生豊かな自慢のコナラ林が変わろうとしています。樹齢20年弱のコナラなら伐採してヒコバエから更新することが可能ですが、大径木のコナラはヒコバエが生えません。苗も日照不足のため数年で枯れてしまうようです。間伐ではコナラ林の更新は困難でしょう(とはいえ、成算がないかも知れませんが、可能性を排除せず色々試してみたいです)。

なな山は、多数のコナラの伐採が控えています。コナラ林として更新するのであれば、方法のひとつとして「小面積皆伐」を検討してみたいです。最低20mほどのエリア内の樹木をすべて伐採し、草地に苗を植樹します。数年ごとに隣地を皆伐していき、コナラ林全体を若返らせる方法です。

以上、こんな方法をたたき台として検討していただければ幸いです。
よろしくお願いします。

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被害が大幅に拡大! でも全枯れを免れれば病気克服か? ナラ枯れ2021年調査報告 [ナラ枯れ]

7~9月、5回にわたるナラ枯れ調査の結果は、被害が大幅拡大と不安を裏打ちさせるものでした。被害本数もそうですが全枯れが大幅に増え、深刻さが強まりました。感染地域も広がり、さらにクヌギにも感染するといった思わぬ状況に唖然としています。

ただ一説によれば、「被害は5~10年程度継続し、被害が終息する頃には穿入対象木のほとんどが穿入を受ける」。つまり、5年長くても10年ほどで終息するようです(「カシノナガキクイムシとその共生菌が関与するブナ科樹木の萎凋枯死」小林正秀・上田明良著)。また、ピークは2~3年目といった説もあり、2年目を迎えたなな山はやむを得ないといったところでしょう。軽度であれば、感染しても抵抗力が付き、病気を克服して成長するので、枯死という激害にならない対策を継続することが必要でしょう。

○2021年ナラ枯れ被害
2021年のナラ枯れ被害は、昨年に比べ3倍ほど増え、地域も拡大しています。
全枯れは18本(昨年6本)と増え、しかも西の山だけでなく、中の山、東の山でも見られます。中枯れ6本を含めれば24本です。「中枯れ」は、全枯れではないが葉枯れが発生し、時間が経過すれば全枯れになりそうな樹木です。葉枯れしていないがフラスが発生している「感染木」は82本です。調査中は2~3本に1本が被害にあっているという印象が強かったのですが、4本に1本、25%程度でした。
今年は、コナラのほかにクヌギも被害にあっています。全枯れ1本、中枯れ1本、感染1本。樹種が増えたのは今後のことを考えると不安が募ります。

・全枯れ …… 18本
・半枯れ ……  6本
・感染木 …… 82本
・被害率 …… コナラ 103本/431本 24.6%
       クヌギ 3本/90本 3.3%

○2020年被害
・全枯れ ……  6本
・感染木 …… 32本
・被害率 …… 38本/437本 8.7%

○ナラ枯れ被害(2021年、2020年)
ナラ枯れ被害.png

○2021年ナラ枯れ調査結果マップ
ナラ枯れ調査_2021.png

○2020年ナラ枯れ調査結果マップ
ナラ枯れ調査_2020.png

○再感染状況
2020年感染したコナラが今年再感染しているかを調べてみました。昨年の感染木32本のうち14本が再感染していました。内訳は、全枯れ4本、半枯れ1本、感染9本です。残り18本は被害を確認できませんでした。ナラ枯れが潜み、病気を克服して生育しているのでしょう。再感染しても全枯れになる可能性が低いのが救いです。

・再感染木 ………… 14本/32本
 内訳 全枯れ ……  4本
    半枯れ ……  1本
    感染  ……  9本

○再感染の有無
再感染の有無.png

○ナラ枯れ対策の効果
9月9日に報告しましたが、ナラ枯れ対策の効果について再掲します。

○ビニールシート被覆
ビニールシート被覆は感染した樹木をビニールシートで被覆し、カシナガ新成虫の飛散防止と穿孔抑止を目的とするもので、樹木の生育を促進する対策です。
コナラ感染木20本にシート対策を行い、再感染なし6本、再感染あり12本、全枯れ2本でした。再感染ありでは、シートの上部などで穿孔とフラスを確認しましたが、全枯れに至っていないのでこのまま推移すれば抵抗力が増して生育すると考えられます。
ただ全枯れ2本は残念でした。シートから出てきた新成虫が飛翔を諦め、同じ樹木に再穿孔して繁殖し全枯れになったと推測されます。
新成虫の飛散防止の効果はあったと思われますが、母木を痛めるとは想定外でした。
・設置樹木数 …… 20本
・再感染なし ……  6本
・再感染あり …… 12本
・全枯れ   ……  2本

○カシナガトラップ
カシナガを垂直板に衝突させて水たまりに落とすトラップは、カシナガの穿孔抑止を目的として、ナラ枯れ感染を防止する対策です。
カシナガに穿孔されそうなコナラの未感染大径木18本に設置しました。結果は、感染なし2本、感染あり16本です。感染ありでは、トラップを避けてその上部や下部、隙間に穿孔していましたが、部分的なため全枯れには至っていません。
トラップがカシナガを呼び込んだ可能性も考えられますが、マスアタックを回避でき、抵抗力が付くことが期待できます。
トラップが樹皮を覆うため穿孔を抑制して軽度の感染で済む効果があったようです。
・設置樹木数 …… 18本
・感染なし  ……  2本
・感染あり  …… 16本

○ナラ枯れ対策の効果
ナラ枯れ対策の効果.png

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オレンジ色のカエンタケ(猛毒)には絶対に触れないで! [ナラ枯れ]

会員のO田島さんからカエンタケの情報が飛び込んできた。
「高尾山では、ナラ枯れ感染木の根元にカエンタケを見かけるようです。カエンタケは猛毒です。触らないように気をつけてください」

カエンタケは毒性が非常に強く、誤って食べると死に至る可能性がある。触るだけで皮膚の炎症を起こすこともあるので、絶対に触らない!

この間ナラ枯れ調査で緑地を回ってフラスなどを確認しているが、カエンタケの発見には至っていない。ナラ枯れ感染の翌年あたりから発生するというレポートもあるので、今年以降、要注意だ。もし発見したらS子に連絡を。市と相談して除去します。

この情報を確認していたら、T瀬さんからも連絡が来る。富士山の麓・山梨県山中湖村でカエンタケが発生している、と。

さすが二人とも里女。アンテナ感度が高い!

カエンタケ.jpg
カエンタケ(横浜市ホームページより)

茂原公園内の猛毒の『カエンタケ』にご注意ください!:千葉県茂原市
http://www.city.mobara.chiba.jp/0000006695.html

猛毒『カエンタケ』にご注意ください!:所沢市
https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/kurashi/seikatukankyo/midori/shizen20200904132605044.html

公園緑地での猛毒キノコ「カエンタケ」にご注意ください:横浜市
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/midori-koen/koen/kaentakechuui2020.html

食べると死にいたることもある危険なキノコ 富士山のふもとの山中湖で相次いで確認:UTYテレビ山梨
https://news.yahoo.co.jp/articles/3757bcb9b0930d68de0579875d9aeaac45566562


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シート被覆とトラップの効果はいかが? ナラ枯れ対策とその効果報告(2021.9.9) [ナラ枯れ]

なな山緑地の会のみなさん

今年も夏を迎えて、2年目のナラ枯れ被害が気がかりになります。
現在、今年の被害状況を調査していますが、一説では2~3年目がピークといわれ、なな山も昨年の数倍の被害です。
今年の被害状況は追って報告しますが、今年の春に実施したナラ枯れ対策の効果がどうなっているかを報告します。実施にご協力いただいたみなさん、その節はありがとうございます。慣れない作業で大変でしたが、その効果は確実に現れています。

○ビニールシート被覆
ビニールシート被覆は感染した樹木をビニールシートで被覆し、カシナガ新成虫の飛散防止と穿孔抑止を目的とするもので、樹木の生育を促進する対策です。
コナラ感染木20本にシート対策を行い、再感染なし6本、再感染あり12本、全枯れ2本でした。再感染ありでは、シートの上部などで穿孔とフラスを確認しましたが、全枯れに至っていないのでこのまま推移すれば抵抗力が増して生育すると考えられます。
ただ全枯れ2本は残念でした。シートから出てきた新成虫が飛翔を諦め、同じ樹木に再穿孔して繁殖し全枯れになったと推測されます。
新成虫の飛散防止の効果はあったと思われますが、母木を痛めるとは想定外でした。
・設置樹木数 …… 20本
・再感染なし ……  6本
・再感染あり …… 12本
・全枯れ   ……  2本

○カシナガトラップ
カシナガを垂直板に衝突させて水たまりに落とすトラップは、カシナガの穿孔抑止を目的として、ナラ枯れ感染を防止する対策です。
カシナガに穿孔されそうなコナラの未感染大径木18本に設置しました。結果は、感染なし2本、感染あり16本です。感染ありでは、トラップを避けてその上部や下部、隙間に穿孔していましたが、部分的なため全枯れには至っていません。
トラップがカシナガを呼び込んだ可能性も考えられますが、マスアタックを回避でき、抵抗力が付くことが期待できます。
トラップが樹皮を覆うため穿孔を抑制して軽度の感染で済む効果があったようです。
・設置樹木数 …… 18本
・感染なし  ……  2本
・感染あり  …… 16本

ナラ枯れでは、感染しても軽度であれば抵抗力が付き、再感染を防止して生育することを確認できたのが何よりです。全枯れを防止し、感染拡大を抑える、というのがナラ枯れ対策の当面の課題でしょう。

ナラ枯れ・調査_IMG_3088_210725.jpg
シート被覆とトラップのダブル対策を実施したご神木。未感染だったが、今年はシート上部などに穿孔・フラスがあり感染した。このまま軽度であれば、抵抗力が付いて全枯れを免れられる可能性大

ナラ枯れ_シート内ムカデ_IMG_3102_210725.jpg
ビニールシート内にムカデのような昆虫が入っていた

ナラ枯れ_トラップ下部_IMG_3089_210725.jpg
トラップ下部にできた穿孔とフラス。トラップが邪魔してマスアタックを防止できた

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ナラ枯れ被害が拡大! 昨年の3.5倍! 【概要調査(2021-7-25)】 [ナラ枯れ]

今年もナラ枯れの季節が来てしまった。対策を講じているつもりでも、蓋を開けないと分からない対策初年である。

○まず、カシナガトラップについて
7月11日、トラップに捕捉されたカシナガの数を、青山学院大の学生ボランティアにカウントしてもらった。西の山の南斜面、中ほど、北側の各1本、計3本が対象。当日の早朝飛翔してきてトラップにかかり水面を泳いでいるカシナガだけでなく、水底に沈んでいるカシナガもピンセットで捕まえ、数えてもらった。作業が丁寧なのが嬉しい。
結果は、南斜面114匹、中ほど80匹、北側166匹。3本合計360匹、1本平均120匹。このトラップの構造上、雨で流れてしまいがちなので単純に設置時からの累計ではないが、捕捉できることを確認できた。このあとトラップ設置のコナラがナラ枯れに感染しないことを祈るのみ。

○次に、今年のナラ枯れ調査について
7月25日、今年のナラ枯れ被害調査がスタートした。桜ヶ丘公園や三方の森では、昨年に比べはるかに激しい全枯れ被害を目にしているのがキッカケ(下部掲載の写真参照)。なな山の樹冠をザッと見上げると昨年より少ないと安心していたが、調べはじめるとアゼン!
この日の調査は、全枯れと半枯れの概数を把握するのを目的とした(フラスのみの感染木は次回以降の詳細調査に回した)。半枯れとは、全枯れではないが、このまま経過すれば全枯れになる可能性が大の木。なな山緑地をひととおり10人で見て回った。

全枯れは、16本(西の山7本、中の山4本、東の山5本)。昨年の全枯れは、西の山の6本だけなので、中の山と東の山に被害が拡大し重度化していることが明瞭だ。
半枯れは、5本(西の山3本、中の山1本、東の山1本)。

全枯れと半枯れを合計すると、21本。昨年に比べ3.5倍。この数はザッと見て回った結果なので、このあと詳細に調査すればさらに多くなる可能性がある。2年目は被害範囲が拡大し、被害度が大だ。

○周りながら気がついたこと
1つめは、新成虫の飛散防止のためにビニールシート被覆した感染木のうち3本が全枯れしていたこと。外に飛翔できなかった新成虫が樹木内に戻り、繁殖して被害を拡大させた可能性がある。新成虫が坑から出てシートと樹皮のあいだを右往左往しているのは実際に確認していたが、その後穿孔したのかもしれない。賢いカシナガは飛翔を諦め、樹木内での繁殖を決め込んだ可能性が大だ。

2つめは、クヌギが2本が感染していること(半枯れ)。昨年はコナラのみだった。樹種が増え、気がかりが増大した。

3つめは、穿孔とフラスが地際に近いこと。5~50cmほどが多い。昨年は50~150cmが中心だったので、何か訳があるのだろうか。

ナラ枯れ・全枯れ_IMG_3049_210725.jpg
全枯れのコナラ

ナラ枯れ調査_IMG_3063_210725.jpg
ナラ枯れのコナラを観察

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ご神木の調査。大径木だが昨年は未感染。ビニールシート被覆+トラップ設置のW予防策を実施した。感染していないようだ

ナラ枯れ・穴確認_IMG_3084_210725.jpg
ナラ枯れの坑を爪楊枝で確認

ナラ枯れ・フラス_IMG_3115_210725.jpg
地際に近い坑とフラス

ナラ枯れ・フラス_IMG_3078_210725.jpg
地際に近い坑とフラス

ナラ枯れ・白カビ_IMG_3110_210725.jpg
白カビが出た昨年の感染木。今年は全枯れ

ナラ枯れ調査_2021-07-25.png
ナラ枯れ調査結果(2020年~2021年7月25日)

ナラ枯れ・三方の森_IMG_3127_210725.jpg
三方の森。全枯れがあちこちに展開している

ナラ枯れ・三方の森トラップ_IMG_3130_210725.jpg
三方の森で発見したなな山と同型のトラップ。多摩市役所が設置したのかも。ビニールシート被覆とトラップは永山南公園でも発見し感動した

ナラ枯れ_桜ヶ丘公園_IMG_3137_210731.jpg
桜ヶ丘公園のナラ枯れ。紅葉が始まったかのようだ

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『調布玉川惣画図』で見るなな山は松林!? [ナラ枯れ]

落葉樹が広がる雑木林がナラ枯れの被害にあったあと、どのような姿に変貌するのかを探る旅は、葛飾北斎や安藤広重の絵をヒントに『江戸名所図会』に辿り着いた。その図から、なな山は松林では? という想像が膨らんだ。

なな山ブログ
『江戸名所図会』で見る関戸・一ノ宮、そしてなな山(https://nanayamaryokuchi.blog.ss-blog.jp/2021-06-23

明治時代、政府によって尾根筋にマツ、谷筋にスギの植林が推奨されたが、江戸時代の里山は荒れ地に強いマツが自生していたと思われる。

さらに調べてみると『調布玉川惣画図』に巡りついた。これは、「江戸時代後期、関戸村の名主・相沢伴主が、多摩川の流れがどこから始まるのか調べてみたいと思い立ち、上流から下流まで歩きながら流域の名所や風景を写生し、長谷川雪堤が浄書したもの」(多摩市立図書館)。13メートルにも及ぶ絵巻物。地元の関戸村周辺は少し細かいうえに、遠くに富士山も望む。

調布玉川惣画図_1080.jpg
調布玉川惣画図

右端の「松蓮寺」は、現在の百草園にあった。そのやや左上がなな山。ここにもマツが描かれている。

ちなみに大栗川について、「大クリ川ハ関戸村ノ入口にアル小川ナリ」とある。

調布玉川惣画図_説明文_1080.jpg
大栗川の解説文

もう一つ気がついたのが、多摩川の源流を描いた先頭部分。「大菩薩嶺」とある山肌には樹木が少ない。現在、落葉樹や常緑樹、針葉樹が生い茂っている奥山は、当時樹木がまばらだったではないか、ということだ。管理が行き届かない奥山は、現在見るような姿ではない可能性が高い。これは、松が多い里山も同じ。落葉樹が生育し緑あふれる里山のイメージは近代に形成されたものといえる。つまり、私たちの自然観は極めて近代的であり、自然は昔から不変というものではない、ということ。

調布玉川惣画図_源流_1080.jpg
多摩川の源流

なお、「調布玉川惣画図」は、多摩市立図書館の多摩市デジタルアーカイブで公開している。複製本は貸し出しができる。

「調布玉川惣画図」多摩市立図書館/多摩市デジタルアーカイブ
https://trc-adeac.trc.co.jp/Html/Home/1322405100/topg/02_sougazu/index.html

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天然林、自力再生は無理? ブナの木成長ササに阻まれ 調査40年 - 毎日新聞 2021.6.21記事 [ナラ枯れ]

ブナ林の再生を40年にわたって調査した森林総研のレポートが毎日新聞で取り上げられました。超長期の研究から植生遷移の一端を窺うことができます。

ポイントは、こうです。
「一度ササの茂る『野』になってしまうと、自然にブナの『山』へと戻るのは難しいことが分かった。近年はスギの伐採後、自然に広葉樹が芽生えて育つことが期待されているが、今回のようにブナの種子が豊富に落ちてくる環境でもうまく成長できなかったので、かなり厳しい」

天然林 自力再生は無理?_2021-6-21_毎日新聞夕刊.jpg

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『江戸名所図会』で見る関戸・一ノ宮、そしてなな山 [ナラ枯れ]

ナラ枯れに直面しているなな山の未来を想像する旅は、一気に江戸時代へ。多摩市の農家さんの「尾根は松、谷は杉」からヒントを得て、コナラが多いなな山はその昔マツ林だったのでは? と思いが馳せる。この格言は「中はヒノキ」と続くが、江戸時代は農業奨励のため雑木林づくりが勧められていたから、山の中腹は落葉樹とも考えられる。

『江戸名所図会』の「小山田旧関 関戸惣図」には関戸と一ノ宮が描かれ、少し離れてなな山と思われる林が見える。

小山田旧関 関戸惣図_021.jpg
『江戸名所図会』小山田旧関 関戸惣図。国立国会図書館デジタルコレクション。
クリックすれば拡大する。

小山田旧関 関戸惣図_022.jpg
絵に描かれていた文字を書き写した。「なな山」は私が付け足した。

「この絵は、関戸と分倍河原の間の多摩川の上空から、南の多摩丘陵の方面を眺めている。画面手前を横切る道は、都道41号の川崎街道にあたる。右端に「一宮」とあるのは一ノ宮村で、小野神社の鳥居が小さく見える。…… 川崎街道と多摩丘陵の間を流れる「大栗川」の橋を渡り、曲折する道を画面奥に進むと、「関戸」と記された村がある。…… その関戸村から右に尾根をたどると、山頂に「天守台」とある。桜ヶ丘一丁目の金比羅宮を鎮座している場所だ。」(「『江戸名所図会』でたずねる多摩」重信秀年著 けやき出版 p.106)

この絵で見る限りマツが多い。なな山は、中央やや右上のマツ林あたり。葛飾北斎の絵にマツが多いのも頷ける。

グーグル アースで角度を合わせてみると、富士山が現れ、右奥にある「秩父」は見えにくい。

大栗川・関戸周辺_GoogleMaps_2_800.png
グーグル アース。手前が聖蹟桜ヶ丘駅周辺、左中央が桜ヶ丘一丁目周辺。中央右の帝京大の赤茶色のビルの手前がなな山。

ちなみに、関戸の天守台は松が生い茂る山頂にある。

関戸天守台_2.jpg
関戸天守台

「社殿は参拝者が上っていく石段の上、峻険な山の頂の巨松の根元にある。眺望は抜群で、多摩川が左から右に流れ、府中宿をはじめ、武蔵野を一望に収める。」(「『江戸名所図会』でたずねる多摩」重信秀年著 けやき出版 p.110)

この天守台からの眺望は素晴らしい。関戸が交通の要所だったことに納得。

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