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シュンラン 《なな山つれづれ草》 - なな山だより [なな山だより]

シュンラン ラン科 Cymbidium goeringii
シュンラン.png
シュンラン なな山にて撮影

3月初旬、なな山では西側斜面の雑木林にシュンランが咲きはじめた。まだ冷たい空気のなか、白と淡い緑のその姿には気高ささえ感じられた。これを皮切りに山は一気に春めいていく。

ここに春を謳歌する一枚の絵がある。「春」これは教科書などに出てくる有名な絵。1482-83年頃、ボッティチェリがロレンツォ、デ、メディチのまたいとこの結婚祝いに描いたもの。絵はヴィーナスを中心に踊る三美神、女神プリマヴェーラ、フローラ、西風のゼフィロスなどで構成されている。女神たちの頭上にはオレンジの木、足許にはさまざまな野草、女神プリマヴェーラはバラを撒き、そのコスチュームには色とりどりの花が散りばめられている。春の喜びが溢れるシーンである。

春.png
「春(プリマヴェーラ)」 ボッティチェリ

この絵の中に描かれている植物を詳細に調べた人がいる。その数約500点。そのうち花をつけている植物は約190点、花のない植物(シダ、ロゼット状の葉)は約240点、残りはイネ科やカヤツリ科の草。同定された植物はバラ、矢車ギク、アネモネ、マーガレットなど50種弱で、いずれも春のフィレンツェ周辺で見られる野草であるという。メディチ家といえば金融で富を築き、イタリアルネサンスの中心となって多くの芸術家を輩出したが、その昔は薬商。メディチの名は英語のメディスンである。フィレンツェという地名は花(フィオーレ)からきていることから、この地が植物の生育に適した地であったことがうかがわれる。であればメディチ家では薬草を栽培し、商っていたことが容易に想像できる。そんな歴史をもつメディチ家のために描かれたこの絵、何十種類もの植物を描き分ける画家の観察眼は驚きだが、その絵の中の植生調査をする人がいるとは、さらに驚きであり、また愉快な話だ。そろそろ、なな山でも春の植生調査が行われる。昨年はキンラン、ギンラン、チゴユリ、ヤマユリなど9種類を中心とした調査であった。新しい野草の発見が期待されている。
   N原さん
   「なな山だより」3号(2006年4月)より

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