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植物標本製作活動を終えて [プレイバック]

なな山緑地の会では、2016年4月に「なな山緑地植物標本プロジェクト」を立ち上げました。

この活動は、首都大学東京牧野標本館の加藤英寿先生の指導のもと、なな山緑地に生育する全維管束植物の標本を作成し、牧野標本館へ寄贈することをめざして行われたもので、同時にこれらの標本は東京都植物誌の作成に寄与することになります。
最初は加藤先生になな山へ来ていただき、植物標本作りの基本を習い、12 人のメンバーで始めました。

美しい標本を作るためには花の最盛期に採取するタイミングが大切でした。実際は、他の植物にからまっているつる性の植物を数人がかりでほどいたり、ホオノキの花は時期がずれると雄しべが落ちてしまうので、好機を見計らって、高い木の上で高枝ばさみを使って花の咲いている枝を採取したり、ヒガンバナは雨の降りしきるなか、どろんこになって球根を掘りあげたりと体を張っての作業でした。
しかし根を掘り上げてみると、ランの根はどれも立派。サイハイランはイモのような偽球茎がぽろぽろと繋がっており、タマノカンアオイの根はどこまでも深く、オオバジャノヒゲには膨らんだ塊根がいくつもついています。またシダは木のように硬い根茎でした。様々な根を掘り上げてみて、植物は根があって完成形であることを改めて認識させられました。

採取した植物を家に持ち帰ってからは、厚みのある根や花は、間に新聞紙を詰め込んだり、スポンジを挟んだりして10kgの重みが均等にかかるように重石を載せます。新聞紙を毎日取り替えるのですが、花数が多いサクラや柔らかな若葉の多い植物はかなり手のかかるくせ者でした。それでも皆、夢中でした。新聞紙の間に和紙を差し入れ、和紙の取り替えに朝までかかってしまった人、アオキの乾燥に3カ月かかってっしまった人、様々な体験がありましたが、新聞紙半分(ほぼA3)に美しく収める自分なりの方法を編み出し、苦労を楽しんでいるようでもありました。植物と向き合っていると、どの植物にも大きな力を感じ、標本が出来上がってみると、今まで見過ごしていた草花がこんなに美しいものかと感動をし、手応えを感じることの出来た活動でした。
このプロジェクトは2017年に終了しました。

寄贈点数は382点、雌株、雄株があるので種類としては木本126種、草本244種、合計370種でした。発見できない植物があるので、なな山の植物全体の90%くらいは収集できたのではないかと思います。採取はしたもののシダをはじめイネ科、カヤツリグサ科など同定できない植物は長池公園園長の内野秀重氏にご協力をお願いし無事完了することができました。

この活動で牧野標本館へ寄贈した標本382点のうちの50点を展示する植物標本展を、牧野標本館との共催で開催することになりました。
思わぬ展開でした。

●明日へ繋ぐ里山の記録 ─ 多摩市なな山緑地の植物標本展
11月7日(水)~18日(日)
牧野標本館 別館TMUギャラリー
   N原さん
   多摩市グリーンボランティア通信「グリーンサークル」32号(2018年11月1日)より

一本梯子に登ってスギの花を採取.png
一本梯子に登ってスギの花を採取

アカネの根を掘る.png
アカネの根を掘る

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