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山のクズ掃き [よもやま話]

なな山緑地の西の山は、現在も里山状に管理されていますが、それは府中で農家を営んでいる住崎さんが、遺産相続に伴ってこれまで守り続けてきた里山が失われて行くことを避けたいとして多摩市に寄付されたことに因っています。
そんな里山としてのなな山緑地の西の山で今もなお続けられている一月のメインの作業が「クズ掃き」です。
今回は、住崎さんのクズ掃きの作業に居合わせたので、その様子を詳しくお知らせしようと思います。

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府中で有機農法による野菜作りに励んでおられる住崎さん

「クズ掃き」は、調べてみると300年以上も続けられているとのことです。
現在のなな山で住崎さんの作業がどんなふうに行われているのか、順に観てみることにします。
最初の作業は、下草刈りです。コナラ、クヌギが枯葉を降ろし始めるころが目安で、おおよそ12月に始まります。
今現在は、下草を刈る作業は刈り払い機で行っていますが、昔は、大変な作業だったと思われます。

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刈り払い機を操作している様子

次が作業の名前にもなっている「クズ掃き」です。山の斜面を熊手で上から下へと降ろす作業です。下草と枯葉を少しずつロール状にしながら下に進めるのがコツになっています。最近は、プロワーという機械で吹き飛ばすという荒業も使われていますが、そう簡単には集めることが出来ません。

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熊手でクズを集める作業の様子

集めたクズをシガラに移動するのですが、住崎さんは竹かごを使ってやっています。
調べると、この竹かごは、「はちほん」(掃き集めた落ち葉を入れるカゴ)と呼ばれるもので、今では入手困難な貴重品だそうです。

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「はちほん」にクズを入れる様子

掃き集めたクズを府中の畑に持って行くために住崎さんは、一度クルマに載せます。
昔はカゴを背負って運んだのでしょうか。ちなみに、なな山の活動では、クズをリヤカーに載せたり、箱状の布袋やブルーシートにくるみ込んでシガラに運んでいます。

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クズを車に積み込む作業の様子

なな山の活動では、クズをシガラに入れているのですが、乾燥したクズはとても嵩張るわけで、なな山では、シガラに人が入って踏み固める作業をします。住崎さんは、クルマの荷台に入れたクズに水をかけて体積を減らしています。
多分、水分を含ませることで発酵を進める効果もあるのでしょうが、その分重くなり、畑に到着しても、今度は、クズをシガラに入れるのも大変な作業になるとのことでした。

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クルマの荷台のクズに水をかけている様子

ちなみに、シガラに入れられたクズは、一年かけてほぼ土(腐葉土)になります。
毎回、前の年に入れたクズから出来た腐葉土を収穫の終わった畑に撒いて、耕耘機ですき込み、空いたシガラに今年のクズを入れるという作業になっている筈です。
正に、循環型の見本のような作業です。

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作業の途中に好い汗をかく住崎さん

住崎さんの話では、「畑の野菜は、人の足音を聴いて育つ」と教わってきたとのことでした。
畑の野菜は、手をかけるほど美味しく育つということではないでしょうか。
私たちもなな山の畑にシガラで作った腐葉土をすき込んで作った野菜を頂く機会がありますが、とても美味しいです。ちなみに、なな山のシガラは、カブトムシの幼虫のゆりかごです。カブトムシが食べた枯葉のフンが畑に撒かれて野菜を育ててくれていることになります。始点をコナラやクヌギの葉が繁るところと考えると、太陽の恵みを頂いていることにななります。美味しい筈です。

注1) シガラについて
柵と書いて「しがらみ」とあって、意味は、①木や竹でつくった囲い。やらい(矢来)。 ②しがらみ。くいを立て、竹や木を横に組んで川の流れをせきとめるもの。 ③とりで。小さな城。「柵塁」とあります。ここでは「しがらみ」のことを「シガラ」と表記して使っています。
注2) 腐葉土について
腐葉土とは土壌をより良い状態へ改善してくれる改良用土・補助用土です。枯れ落ちた落ち葉をミミズなどの虫や微生物が長時間かけて分解することで、葉が崩れて土のように変化した堆肥の一種になります。この腐葉土を土に混ぜることで土全体に微生物が増え、植物の成長を助けるふかふかの土にしてくれます。
   N山さん

**** ここから住崎さんのコメント ****

竹かごは、私が生まれる前から使われているモノです。先人たちは今の道具を観たら驚くと思います。
昔、下草刈は鎌(刃がのこぎりのような鎌)で刈っていました。50年前は、近所の農家は皆さんが、この山に来てくず掃きをしていました。前の道路も砂利道で巾1間(1820)程の広さと聞いています。
リヤカー等でクズを畑に運ぶこのは、大変な重労働だったと思います。

落葉に散水し畑に運び、「落葉と米ぬかと鶏糞」を混ぜて足で踏み固めます。数日たつと発酵が始まります。寒い朝方などは、堆肥から湯気が上がってきます。
手間暇を惜しまず先人たちが毎年山に入り「萌芽更新・くず掃き」を絶やさずこれからも続けて行きたいと思います。今の時代だからこそ、くず掃きを継承する大切を伝えたいですね。
   住崎さん

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