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なな山緑地の樹木たち - なな山だより [なな山だより]

なな山緑地は、里山と呼ばれる雑木林を僅かではあるが引き継いでいる場所です。そこは昔、単に「やま」と呼ばれていて、薪や炭の材を切り出し、堆肥作りの落ち葉掃きを行っていました。そのために、下草は常に刈り取られ、樹木は直径10センチ前後で切り払われていました。切り株からは若木が芽を出し、何本かを残し世代交代が何代にもわたって繰り返し続けられていました。切られた材は、キノコ栽培のホダギとしても使われ、キノコや野草などの食材も「やま」から供給されました。このような林の循環の中で林床に芽生えた草花には、個性的なものが多く、今では珍しくなった品種も数多く見られます。

樹木の種類は約67種
そんな雑木林を、人手を加え維持管理していこうという活動に、いま私たちが取り組みはじめたところです。なな山緑地は、1ヘクタール程の広さにいろいろな植生が入っていて興味の尽きない場所です。
植生は大きく二つに分けられます。一つは、落葉広葉樹が主であるいわゆる雑木林であり、もう一つはスギ、ヒノキが植林された針葉樹の林です。それぞれ林床の植生も対照的であり面白い対比を見せています。
樹木の種類は多く、判っただけでも67種類を数え、その一本一本の生い立ちに思いを馳せると、どれにもいとしさが感じられます。この辺りの雑木林の代表的な樹種は、クヌギ、コナラですが、これらは、薪炭材として、江戸時代中ごろから集中的に育てられました。本来の潜在自然植生(潜在的にこの地に生育する植生)は、シイ、カシ、タブなどの常緑の広葉樹といわれています。人手を入れずに放置しておくと雑木林の樹木はこれらの樹種に置き換わっていきます。昔から百年以上続いているいわゆる鎮守の森のシイ、カシの古木からそのことをうかがい知ることができます。

なな山にはこんな木が…
なな山の雑木林は、ここ40年位の間、一部は里山として使われてきましたが、大部分は人手が加えられずに過ぎたようで、落葉広葉樹が大変大きくなり、常緑広葉樹のシラカシ、アラカシ、イヌツゲ、ヒサカキ、クスノキ、タブノキが見られるようになっています。大径木となった落葉広葉樹には、クヌギ、コナラのほかに、ヤマザクラ、ケヤキ、イヌシデ、クマシデ、ホウノキ、エゴノキ、ウラゲエンコウカエデなどがあります。また、その他の特徴のある落葉広葉樹をあげると、高木では アオハダ、サワフタギ、マルバアオダモ、ハリギリ、コブシ、マユミ、ナツハゼ、ネジキ、カキ、ムクノキ、エノキ、ヤマグワ、クリ、ウワミズザクラなどがあります。低木では、ムラサキシキブ、ヤブムラサキ、ヤマツツジ、ガマズミ、コバノガマズミ、マルバウツギ、ツクバネウツギ、ウグイスカグラ、クロモジ、ゴンズイ、リョウブ、イボタノキなどです。

雑木林と生態系
針葉樹の林は、40年以上前に植えられた部分と20年ほど前に植えられた部分があります。樹種はスギ、ヒノキとサワラも混じっています。今植えられている辺りは谷筋でやや湿り気のある所ですからスギに適していて、斜面のやや高いところはヒノキに適しているといえるでしょう。
木陰が多くやや湿り気のあるこの辺りは、下から生える木も草も落葉広葉樹の林とはまったく異なります。樹木は、アオキ、ヤツデ、カクレミノ、ネズミモチ、トウネズミモチ、ヒイラギナンテンなどの常緑広葉樹が多くあります。
これらは小鳥が実を運んだものや糞の中に混じった種から成長したものでしょう。ハリギリやコブシの芽生えも見られます。マンリョウが大変多く、木としては最小ともいえるヤブコウジはジュウリョウと呼ばれここでもよく見られます。そのほか、ツルグミ、ヤマコウバシ、サカキ、ヒイラギ、タラノキ、コウヤボウキ、クロマツ、アカマツ、アセビ、ニシキギ、ヌルデなどがあります。これからも、新たに見つかる樹木がまだまだある筈です。

雑木林の樹木たちは、人の手も借り、鳥や昆虫、微生物とも命を育むためのやり取りを繰り返し、春夏秋冬のサイクルで成長と世代交代を行っています。太陽と空気と水と土と多くの生き物とそして人との織りなす自然、私たちはこれを生態系と呼んでいます。細かく複雑な生態系の一部ではありますが、私たちの暮らしと雑木林の関わりは、その生態系の中で大変重要な役割を担っているのです。
   相田さん
   「なな山だより」3号(2006年4月)より

なな山緑地の樹木たち.png
なな山緑地全景

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