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里山を寄付した経緯について - なな山だより [なな山だより]

冬になると決まって父が農作業を休み、多摩の里山へでかけ、雑木の萌芽更新とクズ掃きを毎年繰り返し、雑木林を維持してきた。雑木は薪に、落ち葉は堆肥に、実家の営み全てにおいて和田の山が源であった。

今の農家は高齢化が進み、農薬、化学肥料に頼り、農家の基本である「土づくり」は忘れ去られている。畑があるから、里山があるのではなく、里山があるから、畑があるのだ。

相続が発生すると農地は相続猶予を受けることができるが、おかしな事に里山は宅地なみに評価される。今、環境問題で里山の大切さが理解されていても、先祖が維持してきた里山を守る対策がない。私は相続する里山を維持できる仕組みがないものかと会社を辞め奮闘したが、寄付する以外に里山を保全する方法が見当たらなかった。寄付に当たり、渡辺市長と「亡き父が実施してきた雑木林の維持管理を目的とする農家の知恵を生かした雑木林管理」を絶対条件とした。(市は基本計画で網をかけていながら保全する仕組みが何一つ無く、地主は寄付するため必要な費用まで全部負担しなければならなかった。因みに横浜市では、里山寄付の諸経費は市が負担する里山条例が整備されている。)

父が他界しすぐ、会社を辞めたので収入は零となり、生活が脅かされた。相続税を払うために家族を犠牲にしてきた。妻、子供には今でも大変な思いをさせている。
雑木林ボランティア活動も2年目を迎え、会員も増え、月2回の活動日も大勢の方に参加して頂いている。

この里山が一般の公園と全く異なっている点について農家を続けている私が啓発していかなければならないと考えている。里山保全という言葉を今、良く耳にするが、里山保全はは公園管理と違い、農家が農業と里山を結びつけていたことを良く理解しなければならない。農家がなぜクズ掃きをしてきたのか。雑木林と畑との密接な関係。そして今の時代だからこそ、食に関して何が我々にとって安全なのかなどを。多摩市に寄付したとはいえ、寄付の基本は「里山」を次の世代に今と変わらぬ姿で残すことであり、人工的な公園とは、全く異なる雑木林の植生を絶やさない活動をしなければならない。子供たちの自然学習の場として。
   住崎岩衛さん    「なな山だより」創刊号(2005年9月)より

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