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被害が大幅に拡大! でも全枯れを免れれば病気克服か? ナラ枯れ2021年調査報告 [ナラ枯れ]

7~9月、5回にわたるナラ枯れ調査の結果は、被害が大幅拡大と不安を裏打ちさせるものでした。被害本数もそうですが全枯れが大幅に増え、深刻さが強まりました。感染地域も広がり、さらにクヌギにも感染するといった思わぬ状況に唖然としています。

ただ一説によれば、「被害は5~10年程度継続し、被害が終息する頃には穿入対象木のほとんどが穿入を受ける」。つまり、5年長くても10年ほどで終息するようです(「カシノナガキクイムシとその共生菌が関与するブナ科樹木の萎凋枯死」小林正秀・上田明良著)。また、ピークは2~3年目といった説もあり、2年目を迎えたなな山はやむを得ないといったところでしょう。軽度であれば、感染しても抵抗力が付き、病気を克服して成長するので、枯死という激害にならない対策を継続することが必要でしょう。

○2021年ナラ枯れ被害
2021年のナラ枯れ被害は、昨年に比べ3倍ほど増え、地域も拡大しています。
全枯れは18本(昨年6本)と増え、しかも西の山だけでなく、中の山、東の山でも見られます。中枯れ6本を含めれば24本です。「中枯れ」は、全枯れではないが葉枯れが発生し、時間が経過すれば全枯れになりそうな樹木です。葉枯れしていないがフラスが発生している「感染木」は82本です。調査中は2~3本に1本が被害にあっているという印象が強かったのですが、4本に1本、25%程度でした。
今年は、コナラのほかにクヌギも被害にあっています。全枯れ1本、中枯れ1本、感染1本。樹種が増えたのは今後のことを考えると不安が募ります。

・全枯れ …… 18本
・半枯れ ……  6本
・感染木 …… 82本
・被害率 …… コナラ 103本/431本 24.6%
       クヌギ 3本/90本 3.3%

○2020年被害
・全枯れ ……  6本
・感染木 …… 32本
・被害率 …… 38本/437本 8.7%

○ナラ枯れ被害(2021年、2020年)
ナラ枯れ被害.png

○2021年ナラ枯れ調査結果マップ
ナラ枯れ調査_2021.png

○2020年ナラ枯れ調査結果マップ
ナラ枯れ調査_2020.png

○再感染状況
2020年感染したコナラが今年再感染しているかを調べてみました。昨年の感染木32本のうち14本が再感染していました。内訳は、全枯れ4本、半枯れ1本、感染9本です。残り18本は被害を確認できませんでした。ナラ枯れが潜み、病気を克服して生育しているのでしょう。再感染しても全枯れになる可能性が低いのが救いです。

・再感染木 ………… 14本/32本
 内訳 全枯れ ……  4本
    半枯れ ……  1本
    感染  ……  9本

○再感染の有無
再感染の有無.png

○ナラ枯れ対策の効果
9月9日に報告しましたが、ナラ枯れ対策の効果について再掲します。

○ビニールシート被覆
ビニールシート被覆は感染した樹木をビニールシートで被覆し、カシナガ新成虫の飛散防止と穿孔抑止を目的とするもので、樹木の生育を促進する対策です。
コナラ感染木20本にシート対策を行い、再感染なし6本、再感染あり12本、全枯れ2本でした。再感染ありでは、シートの上部などで穿孔とフラスを確認しましたが、全枯れに至っていないのでこのまま推移すれば抵抗力が増して生育すると考えられます。
ただ全枯れ2本は残念でした。シートから出てきた新成虫が飛翔を諦め、同じ樹木に再穿孔して繁殖し全枯れになったと推測されます。
新成虫の飛散防止の効果はあったと思われますが、母木を痛めるとは想定外でした。
・設置樹木数 …… 20本
・再感染なし ……  6本
・再感染あり …… 12本
・全枯れ   ……  2本

○カシナガトラップ
カシナガを垂直板に衝突させて水たまりに落とすトラップは、カシナガの穿孔抑止を目的として、ナラ枯れ感染を防止する対策です。
カシナガに穿孔されそうなコナラの未感染大径木18本に設置しました。結果は、感染なし2本、感染あり16本です。感染ありでは、トラップを避けてその上部や下部、隙間に穿孔していましたが、部分的なため全枯れには至っていません。
トラップがカシナガを呼び込んだ可能性も考えられますが、マスアタックを回避でき、抵抗力が付くことが期待できます。
トラップが樹皮を覆うため穿孔を抑制して軽度の感染で済む効果があったようです。
・設置樹木数 …… 18本
・感染なし  ……  2本
・感染あり  …… 16本

○ナラ枯れ対策の効果
ナラ枯れ対策の効果.png

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