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照葉樹の森 - なな山だより [なな山だより]

伊豆高原へ越して1年半が経ちました。ここは老人施設。伊豆半島の東側、相模湾に面した溶岩に覆われた地です。東京で40年を過ごした私にとっては、生活してみるとなかなかの僻地でした。周囲の状況がやっと判ってきたところのコロナ禍で外出もままならず、救いは近隣のスーパーでの買物と慣れないネット購入をすることのみです。

とは言っても、ここは富士箱根伊豆国立公園、第一特別保護区の中、近くは海岸に沿って十数キロの照葉樹林帯が続き、その中を歩く自然研究路ができています。照葉樹とは強い太陽光にも耐えられるように葉の表面にクチクラ層が発達しているために光沢と厚みがあり、冬でも葉を着けたままの樹木です。クスノキ、タブノキは代表格で、なな山にもありますが、他にヒメユズリハ、ヤマモモ、ホルトノキなどなど大木が多く、人間の力では太刀打ちできない自然の大きさを感じます。

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新緑の照葉樹林

また照葉樹は冬でも木々がこんもりとしているので冬枯れの寂しさは感じられず、新緑の時は山が一回り大きくなったようなダイナミックさです。雑木林の多い多摩は、冬は寂しく、新緑は優しくさわやかなので、私は多摩の自然のほうが好きです。クヌギ、コナラはこちらでも薪や炭を作ったためにあちこちに見られます。これらの葉は1年で朽ちるため堆肥として農業に使われますが、照葉樹の葉が朽ちるのには数年はかかるとのことです。しかしその養分は落葉樹の1.5倍ほどで、フルボ酸が鉄分を溶解し雨で海に運ばれるため里海(藻場)ができ、よい漁礁となるのだそうです。よってこの辺りは釣りのメッカであり、ダイビングスポットとなっています。

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ハマカンゾウが咲く自然研究路

お天気のよい日には木洩れ日を浴びながら近くの自然研究路を歩きます。岸壁からは伊豆諸島が美しく、なかでも大島は海辺の街並みまでも見え、手が届きそうです。そんな海ですから、昔も今も男たちは海に繰り出し、島々を渡り歩いていたのだろうなと想像しながら、初めて見る植物を探して照葉樹の森を歩いています。
   N原さん  「なな山だより」50号(2020年10月)より

◇海岸近くで見られる植物
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ハマゴウ
白で縁取りされた葉と薄紫色の花のコントラストが美しい。

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イヨカズラ
花弁(直径5mm)の先がねじれて風車のよう。小さな花からは想像もできない大きな実(長さ4cm、下の写真)。

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イヨカズラ実

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モクレイシ
日本列島では静岡県、神奈川県のほか九州南部から南西諸島に隔離分布する植物。

◇海岸近くで見られる植物
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ホルトノキ
初夏に古い葉が紅葉する。

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ホルトノキ

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スカシユリ:断崖絶壁に咲く。

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