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なな山のナラ枯れ対策について(案) [ナラ枯れ]

なな山緑地の会のみなさん

2月2日市公園緑地課と業者の現地確認があり、いよいよナラ枯れ対策が本格化します。冬眠中のカシナガ幼虫が新成虫になって飛翔する5月下旬頃までにナラ枯れ対策を講じることになります。これまで暑い中ヤブ漕ぎでナラ枯れを調査するといったハードな作業がありました。これからも大変ですが、感染防止となな山の保全に向けていっしょに活動していきたいものです。

はじめにみなさんに謝ることがあります。市が伐採するコナラを全枯れ6本と決めたことです。当初、市は感染した全樹木を伐採する方針でした。発見した38本すべてを伐採すれば、植生(特に西の山)が大きく変わり、その保全はどうする? と悩ましさが募っていました。そこに「予算上、全部はムリ」と連絡があり、小躍りして描いていた全枯れ6本の伐採をお願いしてしまいました。研究報告では、ナラ枯れに感染しても抵抗力が付いた木はそのまま成長する、ということ。もちろん伐採は感染拡大の防止策ですが、感染が軽度の木からカシナガ飛翔を抑え込めるのであれば伐採しなくても良いのでは、と期待していました。穴がボコボコ開いた山を保全するより、ナラ枯れと共存しながらなな山を保護・育成するのが良いです。

伐採しない感染木の対策など、課題と作業は多いです。対策の案をまとめました。少し話が長くなりますが、お付き合いください。

対策の概要は、次のとおりです。
1. 伐採木の根からカシナガ飛翔を防止する
2. 伐採しない感染木からカシナガ飛翔を防止する
3. 未感染木へのカシナガ穿入を予防する

これには検討中のカシナガトラップに加え、ビニールシート被覆が欠かせません。予算も2万円ほど必要です。
ご検討のほど、よろしくお願いします。


1.ナラ枯れと調査結果
2020年8月ナラ枯れ発見の話を受け、9月以降ナラ枯れの調査をしました。結果は、枯死木(全枯れ)が6本、感染木が32本。感染した木はすべてコナラでした。感染率は8.7%(38/437本)、中~激の被害状況です。
感染した木の胸高直径は平均39.68で、コナラ全部の平均31.62より大きく、やはり大径木(樹齢が高い)ほど感染しています。

2020年ナラ枯れ調査結果 (2020年9月~2021年2月7日)

 枯死木(全枯れ)  感染木   胸高直径平均 
6本 32本 41.4


コナラ本数 (2016年樹木調査結果)

 コナラ   胸高直径平均 
437本 31.8


「枯死木(全枯れ)」とは
「枯死木」とは、樹冠が葉枯れしているコナラです。カシナガに寄生するナラ菌が樹幹の導管を詰まらせ、樹液が樹上の葉に届かないため立ち枯れします。
カシナガが穿入した木すべてが全枯れするのではなく、耐えて生育する木もあります。この違いは、カシナガの繁殖条件に適しているかどうかです。枯死木は、カシナガには絶好の繁殖環境のため膨大な数のカシナガがフェロモンで呼び寄せられ、大量のナラ菌が繁殖して導管が詰まってしまいます。
枯死木で冬眠したカシナガの新成虫は6月以降飛翔し、ほかの木にナラ枯れ感染を拡散します。ナラ枯れの防止には、この飛翔を止めること必要です。

ナラ枯れ_IMG_1200_210207.jpg
中央が枯死木。葉枯れしているが落ちていない。周りが落葉した感染木と生立木。

「感染木」とは
「感染木」とは、カシナガが穿入しても全枯れしていない木です。フラスが確認された木や、フラスは見当たらないが穿孔などで健全木とは異なる木(経過観察木)。フラスは、穿孔から出た木くずなど。感染木は枯死木と同様、新成虫の飛翔によって感染を拡散させます。
この感染木のポイントは、一度感染すると抵抗力が付き、再度のカシナガ穿入を受けにくいこと。これは感染したまま生育する可能性が高く、感染翌年の飛翔拡散を防止すれば放置してもよいということです。

2.なな山でのナラ枯れ対策
ナラ枯れは数年続くといわれ、10年以上という地域もあります。放置すれば立ち枯れが増え、枝の落下や倒木といった林内の危険性が拡大するだけでなく、ほかの地域にナラ枯れを拡散してしまいます。ナラ枯れ対策を講じて、なな山の現植生を維持し、里山環境を保全したいものです。

対策は、枯死木、感染木、生立木ごとに行います。カシナガの新成虫が飛翔する前に講じておくことがポイントです。長期的な対策として大径木の伐倒など感染を受けにくい里山づくりもテーマです。

対策を講じても画期的な成果が現れるかは不明です。状況を判断しながら数年継続する必要があります。カシナガの飛距離はピークが300m、最大25kmといわれ、なな山だけの対策で終息することはないでしょう。市や森木会、各団体と連携して進めていきたいです。

ナラ枯れ対策カレンダー.png

3.枯死木の対策
枯死木6本は、公園緑地課・業者と現地確認し(2月2日)、市の予算で業者が伐採し、域外搬出・焼却処分します。伐採時期は3~5月、搬出は伐採から2週間以内の予定です。
課題がひとつあり、それは根の処分です。地際20cmで伐採するので、残った根からカシナガが飛翔拡散する可能性があります。その防止策としては、ビニールシートで被覆することです(薬剤は使いたくないので)。根の周りを掘り、被覆したビニールシートの端を埋め込み、カシナガの脱出を防止します。
この処置は公園緑地課の作業にないので、当会で作業することになるでしょう。

4.感染木の対策
感染木からのナラ枯れ拡散を防止するには、カシナガ新成虫を感染木に封じ込めることです。この対策に薬剤を使用したくないので、ビニールシートで樹幹を被覆します。封じ込めればカシナガは死滅します。作業時期は、飛翔前の5月末まで。

ビニールシート被覆
地際からカシナガ穿入孔のある高さまでビニールシートで樹幹を被覆します。樹幹とビニールシートに隙間を作り、カシナガをここに封じ込めます。ビニールシートの上下は2枚重ねにしてヒモで縛り、脱出を防止します。
下記のように被覆する場合、ビニールシート(厚さ0.1mm、幅1m×長さ100m、5,500円)を2本使います。
・対 象:   感染木 32本 (胸高直径平均 32.2cm)
・シート被覆: 1本 4.5m (1巻き1.5m × 3段)

5.生立木の対策
ナラ枯れ未感染の生立木をナラ枯れから守るには、カシナガの穿入を防止することです。この対策としては、カシナガトラップとビニールシート被覆の2つを検討してみます。作業時期は、飛翔前の5月末まで。
この対策をコナラ全400本に講じるのは至難なので、カシナガがマスアタックしやすい木を選ぶのが次善の策でしょう。マスアタックとは、カシナガの繁殖条件が整った木に大量に穿入すること。フェロモンを出して仲間を呼び寄せます。コナラ分布図、コナラ一覧表(樹木調査から抽出)をもとに現地調査して選定します。

マスアタックされやすいコナラ
・大径木 (胸高直径50cm以上なら31本、40cm以上なら86本、30cm以上なら203本)
・穿入する高さ(地際から2.5mほど)にシノダケなどの障害物がない木

①カシナガトラップ
「カシナガトラップ」は、穿入する木の回りを旋回するカシナガの習性を逆用して捕捉するものです。クリアファイルで簡単に製作でき、効果も期待できます。
トラップ1個にA4クリアファイル1.5枚使い、例えば胸高直径50cmのコナラ1本なら12個設置します(4列×3段)。
設置したあと、トラップをチェックし、水を入れ替える、といった作業を行います。
下記のように設置する場合、A4クリアファイル(12枚入り、100円)が47セット必要です。
・対 象: 生立木 31本 (胸高直径 50cm以上)
・クリアファイル: 558個 (1.5枚 × 12個 × 31本)

カシナガトラップ_IMG_0242_200927.jpg
カシナガトラップ

②ビニールシート被覆
地際から2~4mをビニールシートで被覆し、カシナガの穿入を防止します。3~5年有効です。感染木のビニールシート被覆と同じですが、樹幹に密着させて巻き、隙間を作らないのが違いです。
ナラ枯れから保護したい木を優先して被覆するのが望ましいですが、ビニールシートが高額なので、感染木の被覆でビニールシートが余ればそれを使うのが現実的でしょうか。

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